総務省は2026年11月6日、NTTドコモに対して文書による行政指導を行いました。ドコモMAXなどの料金プランをオンラインで申し込んだ契約者のうち34万4,213人分の電話番号と利用者識別子を、有効な同意を得ないまま約4か月間アマゾンジャパンに送っていたためです。総務省はこれを電気通信事業法に抵触する「特定利用者情報の漏えい」と判断し、再発防止策の実施状況を2026年12月末までに文書で報告するよう求めています。
提供された情報は使われないまま削除されており、二次被害はないとされています。それでも国が「重大な過失」とまで書いたのはなぜか。この記事では、総務省が公表した指導文書をもとに、何が起きたのか、どこが問題とされたのかを整理し、ドコモ利用者が自分の同意設定を確かめる方法も紹介します。

ドコモへの行政指導、何があった?
総務省の報道資料「株式会社NTTドコモに対する特定利用者情報の保護に向けた措置(指導)」と、別紙の指導文書から読み取れるポイントは次のとおりです。
① ドコモMAXなどのオンライン申込画面を見直した際、アマゾンへの情報提供についての説明が抜け落ち、契約者から有効な同意を取らないまま情報を送っていた
② 送った情報は34万4,213人分の電話番号と利用者識別子。提供は約4か月間続いた
③ 総務省は電気通信事業法に抵触すると判断し、厳重注意とともに、再発防止策の実施状況を2026年12月末までに報告するよう求めた
行政指導の内容(総務省の公表資料より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指導した日 | 2026年(令和8年)11月6日 |
| 指導した機関 | 総務省 総合通信基盤局 |
| 指導の形 | 文書による行政指導(厳重注意) |
| 対象のサービス | ドコモMAXなどの料金プランのオンライン申込 |
| 提供先 | アマゾンジャパン合同会社(ドコモMAXなどの契約者向け特典サービスの提供元) |
| 提供した情報 | 電話番号と利用者識別子 |
| 人数 | 34万4,213人分 |
| 期間 | 約4か月間 |
| 根拠の法律 | 電気通信事業法 第27条の5など |
| 報告の期限 | 2026年12月末までに再発防止策の実施状況を文書で報告 |
なお、総務省の資料には、対象となった申込の正確な期間や、ドコモMAX以外にどのプランが含まれるかの一覧は載っていません。ドコモの公式サイトでも、今回の件をまとめたお知らせは確認できませんでした(2026年11月7日時点)。この記事では、総務省が公表した範囲だけを書いています。
なぜ「同意なき提供」が問題になったのか
申込画面から説明の一文が消えていた
指導文書の説明では、きっかけはオンライン契約の申込手続きの「導線」、つまり申込画面の流れを見直す作業でした。重要事項説明などの注意事項から、アマゾンへの利用者情報の第三者提供について書かれた部分が欠けていたのに、作業を担当した部門はそれに気づかないまま新しい画面を確定させてしまいました。
その結果、本来なら「アマゾンへ情報を渡すことに同意します」という確認を経てから送るはずの情報が、同意を取らないまま送られ続けました。仕組みとしては情報を渡す前提だったため、システムは止まらずに動き続けたわけです。
「未使用・削除済み」でも重大な過失とされた理由
送られた情報は、アマゾンが特典サービスをまだ使っていない人に案内を出すために使う予定だったものです。ドコモの報告では、報告の時点で使われておらず、この件を受けて削除されたため二次被害はないとされています。
それでも総務省は、電話番号と利用者識別子はアマゾン側で自社のアカウント情報と照らし合わせ、利用者個人を特定するための情報だと指摘しました。そのうえで、約4か月もの間、同意のないまま提供し続けたことを「利用者利益を損ねるおそれが生じ得る重大な過失」と認定しています。実際の被害がなくても、本人の知らないところで「誰がどのサービスの契約者か」が他社に伝わる状態だったことが重く見られた形です。
原因は確認不足と管理体制
総務省は原因として、申込画面の見直しで記載漏れをチェックする十分な手順がなかったこと、担当部門の確認不足、部門どうしの連携不足といった人為的なミスと管理体制の不備を挙げました。さらに、作業担当部門とサービス担当部門で、特定利用者情報を守る意識が十分でなかったおそれもあると書いています。
「特定利用者情報」とは?ドコモに課されているルール
今回の指導の根拠になった電気通信事業法の第27条の5は、利用者への影響が大きい通信サービスを提供する事業者を総務大臣が指定し、利用者に関する情報の取り扱いを特に厳しく求める仕組みです。ドコモはこの指定を受けた事業者の1つで、総務省は指導文書で、ドコモのサービスが国内の多くの人に毎日使われていることにも触れています。

総務省の解説ページでは、指定を受けた事業者には主に次のような義務があります。
| 主な義務 | 内容 |
|---|---|
| 情報取扱規程 | 特定利用者情報の取り扱いのルールを定め、総務省に届け出る |
| 統括管理者 | 特定利用者情報の管理を取りまとめる責任者を選ぶ |
| 取扱状況の評価 | 取り扱いの状況を定期的に評価し、見直しにつなげる |
| 漏えいの報告 | 一定規模以上の漏えいなどが起きたときは総務省に報告する |
今回の件も、ドコモから総務省へ提出された漏えいの報告書が出発点になっています。指導文書では、必要に応じて情報取扱規程などを見直すことも求めています。
ドコモが示した再発防止策
指導文書には、ドコモが予定している再発防止策も書かれています。
- 今回問題になった申込画面の流れを正しい形に直す
- ほかの申込画面の流れもすべて点検する
- 今後、申込画面を見直すときは、規約ごとに更新の責任者を決める
- 関係する従業員への周知と教育を行う
総務省は、これらを確実に実施するとともに、オンラインの手続きに限らず、同意を取らないままの第三者提供が起きないよう徹底することを求めました。実施状況の報告期限は2026年12月末です。報告の内容が公表されるかどうかは未発表です。
11月5日の不正アクセスとは別の問題
ドコモでは2026年11月5日に、ドコモオンラインショップとMy docomoへの不正アクセスによって最大約30万件の会員情報が流出したと発表されたばかりです。人数が近いため混同しやすいのですが、今回の行政指導はそれとは別の案件です。
| 比べる点 | 今回の行政指導の件 | 11月5日発表の不正アクセス |
|---|---|---|
| 何が起きたか | 申込画面の記載漏れで、同意のないまま他社へ情報を送った | 外部からの不正アクセスで会員情報が流出した |
| 情報が渡った先 | アマゾンジャパン(すでに削除) | 不正アクセスをした第三者 |
| 人数 | 34万4,213人分 | 最大約30万件 |
| 主な情報 | 電話番号と利用者識別子 | 氏名・住所・生年月日・電話番号など |
不正アクセスの件で流出した項目や、なりすまし連絡への備えは、こちらの記事で詳しくまとめています。

ドコモ利用者が今できること:同意設定の確認
今回の件で送られた情報はすでに削除されていますが、「自分の情報がどこに提供される設定になっているか」を一度見ておくのはよい機会です。ドコモでは、第三者提供についての同意の状況を「パーソナルデータダッシュボード」で確認・変更できます。

パーソナルデータダッシュボードでの確認手順
- ドコモの「パーソナルデータダッシュボード」を開き、案内に従ってログインする
- 「第三者提供の管理」を開き、今の設定を確認する
- 止めたい提供があれば、「かんたんおすすめ設定」または「個別詳細設定」から変更する
ドコモのよくある質問ページでは、次の点に注意するよう書かれています。
- 停止できるのは、同意事項の「ドコモのパートナーへの第三者提供」に書かれた提供で、止められるのは今後の提供
- 停止しても、それまでに同意に基づいて提供された情報による案内などは止められない
- 設定の反映には数日かかる場合がある
- サービスの利用に必要で個別に同意している提供などは、この設定では止められない
Amazonプライムの特典を使っている人は
ドコモの「パーソナルデータの取扱いに関する同意事項」のページには、Amazonプライムに関する第三者提供として、識別子と電話番号などをアマゾンジャパンに提供すること、その利用目的が載っています。特典を正しく使うために必要な提供もあるため、設定を変える前に、自分が使っているサービスに関係するかどうかを同意事項のページで確かめておくと安心です。
「お詫び」をかたる連絡に注意
大きく報道された件のあとは、それに便乗した偽のメールやSMSが出回りやすくなります。「確認のため」「補償の手続き」などとしてリンクを開かせ、dアカウントのIDやパスワード、カード番号を入力させようとする連絡には応じないでください。ドコモに関する手続きは、届いたメッセージのリンクからではなく、ブックマークや公式アプリから開くのが基本です。
よくある質問
Q. 自分が34万人に含まれているか、どうすれば分かりますか?
A. 総務省の資料には、対象者の調べ方は書かれていません。ドコモの公式サイトでも、今回の件をまとめたお知らせは確認できませんでした(2026年11月7日時点)。気になる場合は、ドコモの正規の問い合わせ窓口に確認してください。
Q. 名前や住所、カード番号もアマゾンに渡ったのですか?
A. 総務省が公表した提供項目は、電話番号と利用者識別子です。氏名・住所・カード番号が提供されたとは書かれていません。
Q. 情報が悪用される心配はありますか?
A. 総務省の資料では、提供された情報は報告の時点で使われておらず、この件を受けて削除されたため、二次被害はないとされています。
Q. ドコモに罰則はあるのですか?
A. 今回は文書による行政指導(厳重注意)で、再発防止策の実施状況を2026年12月末までに報告するよう求めたものです。罰金などの処分ではありません。
まとめ
総務省は2026年11月6日、NTTドコモが申込画面の記載漏れにより、34万4,213人分の電話番号と利用者識別子を有効な同意なしに約4か月間アマゾンジャパンへ送っていたとして、文書で行政指導しました。情報は使われずに削除され二次被害はないとされていますが、総務省は個人の特定につながる情報だとして「重大な過失」と認定し、2026年12月末までに再発防止策の報告を求めています。
11月5日に発表された不正アクセスによる情報流出とは別の件です。ドコモを使っている人は、この機会にパーソナルデータダッシュボードで第三者提供の設定を確認しておくとよいでしょう。報道に便乗した偽の連絡にも注意してください。



